こんにちは。弁護士法人咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
経理担当者による業務上横領被害について、どう対応すればよいかわからず、お困りではありませんか?
社内で経理担当者による業務上横領が発生した場合、会社は以下のような対応をとる必要があります。
- (1)調査を行い、業務上横領の証拠を確保する
- (2)本人に事情聴取を行う
- (3)返済方法を協議する(必要に応じて刑事告訴も検討する)
- (4)懲戒解雇・普通解雇・退職勧奨等により雇用を終了する
- (5)社内・社外への説明をする
- (6)再発防止策を立てる
ただし、これらの対応を進めるにあたっては、いくつか注意すべき点があります。特に、自社のみの判断で安易に本人に問いただしたり、あるいは解雇したりしてしまうと、かえって以下のようなリスクを招くことになります。
- 本人に問いただした後に証拠を隠滅されて被害回復が不可能になる
- 法的に不備のある解雇を行ってしまい、逆に不当解雇として訴えられる
このようなリスクを避けるためには、初期の調査段階から弁護士のアドバイスを受けつつ、慎重に手続きを進めることが大切です。
業務上横領は会社に対する重大な背信行為であり、犯罪です。
しかし、会社が業務上横領による被害を回復し、正しく対処するためには、適切な手順で調査を行い、証拠を確保することが必要です。そのうえで、弁護士のサポートを受けながら、損害賠償請求、解雇のほか、場合によっては刑事告訴を含めた毅然とした対応をしていく必要があります。
この記事では、経理担当者による横領はなぜ起きるのかについてや、業務上横領のよくある手口、実際の事例、トラブルが発生した際に会社が取るべき対応、業務上横領被害について弁護士に相談すべき理由、また、経理による横領を防止するための対策まで具体的に解説しています。この記事を最後まで読んでいただくことで、現在、社内で発生している経理担当者による横領トラブルに対して、弁護士のサポートのもと、リスクを回避しながら問題解決に向けた行動を起こせるようになります。
それでは見ていきましょう。
弁護士西川 暢春
経理担当者による業務上横領被害が発生した場合、初期段階の対応が最も重要です。調査や証拠確保等の段階で不備があると、本人に損害賠償請求しようとしても、横領を否定され、被害回復ができません。また、業務上横領を理由に解雇した場合も、証拠が不十分であれば不当解雇として訴えられて敗訴する危険を負うことになります。
実際に咲くやこの花法律事務所でご相談をお受けした事案の中にも、初期段階でご相談いただいていればもっと適切に被害を回復できたのにと思う例が少なくありません。経理に関する業務上横領被害が発覚した際は、可能なかぎり早く弁護士にご相談いただくことを強くおすすめします。
咲くやこの花法律事務所では、多くの事業者から業務上横領被害に関するご相談やご依頼をいただき、解決してきた実績があります。横領被害でお困りの事業者様は、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。咲くやこの花法律事務所のサポート内容は以下でもご説明していますのであわせてご参照ください。
▶参考情報:業務上横領に関する弁護士によるサポートはこちら(被害企業向け)
※咲くやこの花法律事務所では、企業または事業者からのご相談のみお受けしています。
また、経理担当者による横領についての咲くやこの花法律事務所の解決事例もご紹介していますのであわせてご覧ください。
ー この記事の目次
- 1.経理担当者による業務上横領とは?窃盗や詐欺との違いも解説
- 2.経理による業務上横領等の手口は?
- 3.経理による横領はなぜバレる?発覚するきっかけは?
- 4.経理による業務上横領等が起きた場合に会社が取るべき対応
- 5.経理担当者による業務上横領が起きる原因は?
- 6.経理担当者による業務上横領がニュースになった事例
- 7.経理の横領を未然に防ぐための対策とは?
- 8.業務上横領被害について弁護士に相談すべき理由
- 9.実際に咲くやこの花法律事務所の弁護士が経理担当者による業務上横領についての対応をサポートした解決事例
- 10.横領被害の対応に関して弁護士に相談したい方はこちら
- 11.まとめ
- 12.【関連】業務上横領に関するその他のお役立ち記事
1.経理担当者による業務上横領とは?窃盗や詐欺との違いも解説
業務上横領とは、「業務上自己の占有する他人の物を横領すること」をいいます。刑法では第253条に規定されており、法定刑は10年以下の拘禁刑と定められています。典型例としては、経理担当者が自身が管理している会社の金銭を無断で自身の口座に送金する、自身が管理している小口現金を私的に流用するなどといったケースがあげられます。
また、業務上横領によく似た犯罪に窃盗罪や詐欺罪があります。
1−1.窃盗罪との違い
窃盗罪は、他人の占有する財物(お金や物)を盗んで自分のものにすることにより成立する犯罪です(刑法第235条)。「他人の物を自分のものにする」という点では業務上横領罪と共通していますが、窃盗と業務上横領では、対象物をもともと犯人が占有していたかどうかという点が異なります。
窃盗罪が他人が占有している金銭等を盗んで自分のものにする犯罪であるのに対し、業務上横領罪は、もともと自分が管理を任されていた他人の金銭等を自分のものにする犯罪です。
1−2.詐欺罪との違い
一方、詐欺罪は、人をあざむいて金銭等を交付させた場合に成立する犯罪です。詐欺罪と業務上横領罪は、被害者による交付行為の有無が異なります。詐欺罪が人をだまして金銭を交付させる犯罪であるのに対し、業務上横領罪は、被害者の交付行為によらずに無断で自分のものにしてしまう犯罪です。
経理担当者による不正にも、法的には、業務上横領にあたるもの、窃盗にあたるもの、詐欺にあたるものなどが考えられますが、以下ではこれらをあわせて「業務上横領等」と呼んでご説明します。
▶参考情報:なお、業務上横領についての全般的な解説は以下をご参照ください。
2.経理による業務上横領等の手口は?

経理担当者による業務上横領等の不正の手口としては、主に以下のようなものがあります。
- レジや金庫等から現金を抜き取る
- インターネットバンキング等を利用して会社の口座から自身の口座に送金する
- 交通費や接待費の架空請求による着服
- 取引先と共謀して会社に無断でキックバックを受領する
- 社内の切手や金券を無断で売却し、金銭を着服する
また、上記の犯行を隠蔽するために、あわせて帳簿の改ざんをしたり、架空の請求書を発行する等といったケースもよく見られます。
3.経理による横領はなぜバレる?発覚するきっかけは?
経理による横領が発覚するきっかけは様々です。
典型的なきっかけとして以下の例を挙げることができます。
- (1)帳簿と実際の残高の不一致が社内監査や会計監査で指摘される
- (2)税務調査で、使途不明金や不自然な経費計上について指摘される
- (3)経理担当者の退職や休職により、後任者が横領を発見する
- (4)取引先からの指摘や社内の他の従業員からの内部通報によって発覚する
実際に社内の経理担当者による横領が発覚した際は、適切な手順で調査を行い、証拠を確保し、被害回復のための正しい対処が必要です。次の「4.経理による業務上横領等が起きた場合に会社が取るべき対応」を参考にしてください。
4.経理による業務上横領等が起きた場合に会社が取るべき対応

経理担当者による業務上横領が起きた場合に、会社が取るべき対応は以下の通りです。
- (1)調査を行い、業務上横領の証拠を確保する
- (2)本人に事情聴取を行う
- (3)返済方法を協議する(必要に応じて刑事告訴も検討する)
- (4)懲戒解雇・普通解雇・退職勧奨等により雇用を終了する
- (5)社内・社外への説明をする
- (6)再発防止策を立てる
上記の対応の中で特に重要なのは、(1)の証拠の確保と(2)の本人からの事情聴取です。言い逃れができないように証拠を十分に確保した上で、事情聴取で本人に横領の事実を認めさせることが非常に大切です。
本人に横領の事実を認めさせることができれば、その後の解雇と返済について本人に争われるリスクをなくすことができるため、対応をスムーズに進めることが可能になります。
以下で順番に見ていきましょう。
4−1.(1)調査を行い、業務上横領の証拠を確保する
十分な調査を行わないまま、横領が疑われる経理担当者本人に問いただして、否認され、その後の対応が難しくなってしまっている例は非常に多いです。
経理担当者から事情を聴く前に十分な証拠を集めておくことが非常に重要です。どのような証拠を集めるべきかは事案ごとに様々ですが、例えば以下のように考えることができます。
1.レジや金庫等から現金を抜き取っているケース
防犯カメラを設置し、犯行の場面を撮影することが最も適切な証拠確保の方法です。
2.インターネットバンキング等を利用して会社の口座から自身の口座に送金しているケース
まずは送金の履歴を確保し、整理することが必要です。また、本人の給与や本人が立て替えた経費など、本人が正当に自身の口座の送金することが認められる金銭の額を確認しておくことが必要です。そのためには給与明細や立替経費の明細書を証拠として確保しておくべきです。
3.交通費や接待費の架空請求による着服のケース
まずは交通費や接待費が経理担当者に対して支出されたことを示す送金履歴や会計帳簿の履歴を確保する必要があります。また、交通費や接待費についての請求書を証拠として確保し、それが誰によって作成されたのかを確認する必要があります。そのうえで、その交通費や接待費が架空のものであることについて調査をして証拠を確保することが必要です。
▶参考情報:経費の横領や不正については以下でも解説していますのであわせてご参照ください。
4.取引先と共謀して会社に無断でキックバックを受領しているケース
まずはキックバックを提供している取引先と自社の契約書や取引先からの自社宛の請求書を確認する必要があります。そのうえで、取引先とのメールの履歴を調査する必要がありますが、最終的には取引先から事情を聴き、リベートを本人に提供していたことについて裏付けを得る必要があります。
この点については、自社で調査をしようとしても取引先から協力を拒否されたり、リベートの提供を否定されたりしがちです。そのため、弁護士等を含めた特別調査委員会を設置することで、取引先にも嘘をついた時のリスクを意識させたうえで、リベート提供の全貌を報告させるなどの対応が必要です。
▶参考情報:従業員の違法なリベートが発覚した場合に会社が取るべき対応については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
5.社内の切手や金券を無断で売却し、金銭を着服しているケース
防犯カメラを設置し、犯行の場面を撮影することが最も適切な証拠確保の方法です。
また、切手や金券の売却先を特定し、その金券ショップ等に照会をかけることで、従業員による換金行為の全貌を把握することができます。金券ショップ等の古物商は取引について記録を残すことを法律上義務付けられており、その記録を入手することが重要になります。
弁護士西川 暢春
これらの調査を自社でやろうとして失敗してしまっている例も多いです。
例えば、防犯カメラを設置したものの、SDカードに映像が記録されるタイプのものを設置したため、調査に気づいた経理担当者に映像を削除されてしまったと思われる例もありました。そのほかにも事案ごとに様々な失敗事例があります。
咲くやこの花法律事務所ではそのような経験も踏まえつつ、調査を支援することで、確実な証拠確保をサポートしています。調査を失敗してしまうと被害を回復できなくなることもあるため、調査段階から弁護士に依頼することが適切です。また、証拠がない場合はどうすればよいかということは以下で解説していますのであわせてご参照ください。
4−2.(2)本人に事情聴取を行う
十分な証拠を確保したうえで、本人に事情聴取を行います。ここで本人に業務上横領等の不正を認めさせ、返済を誓約させることが非常に重要です。
本人がすぐに認めない場合も、手持ちの証拠をうまく使いながら、本人の説明との矛盾を指摘し、上手に不正を白状させることが必要になります。この部分も事情聴取のテクニックが必要になる場面であり、業務上横領被害等の回復に強い弁護士に依頼することが適切です。
4−3.(3)返済方法を協議する(必要に応じて刑事告訴も検討する)
本人が不正を認めたら返済方法を協議します。本人に資力がなく一括返済が困難な場合は分割払いにより対応する必要がありますが、その際は、公正証書を作成しておくべきです。本人の態度が不誠実な場合はあわせて刑事告訴も検討します。
▶参考情報:刑事告訴については以下でもご説明していますのであわせてご参照ください。
4−4.(4)懲戒解雇・普通解雇・退職勧奨等により雇用を終了する
金銭的な不正があった経理担当者の雇用を継続することは通常適切とは言えません。懲戒解雇・普通解雇・退職勧奨等によって雇用を終了することになります。
▶参考情報:懲戒解雇、普通解雇、退職勧奨それぞれについては、以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。
・横領があったときの懲戒解雇や処分、退職金の扱いを詳しく解説
4−5.(5)社内・社外への説明をする
業務上横領等の被害について必要に応じて社内への説明を行います。事件が報道されたときや上場企業で横領被害が発生したときなどは、社外への説明や適時開示が必要になることもあります。
4−6.(6)再発防止策を立てる
業務上横領等についての対応がひととおり済んだら、再発防止策を立てることが必要です。これについては、「6.経理の横領を未然に防ぐための対策とは?」で解説します。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の弁護士による経理担当者の横領等に対する対応サポートについては、以下をご参照ください。
・経理担当者による横領等の不正行為に関する対応サポートはこちら
※咲くやこの花法律事務所では、企業または事業者からのご相談のみお受けしています。
5.経理担当者による業務上横領が起きる原因は?
経理担当者による業務上横領が起きる主な原因としては、以下の2つがあげられます。
- (1)従業員側に横領の強い動機があること
- (2)横領を防ぐための社内体制が整っていないこと
以下でそれぞれ詳しく解説します。
5−1.(1)従業員側に横領の強い動機がある
一つ目は、従業員側に横領の強い動機があることです。
よくある横領の動機としては、以下のような例があげられます。
- 競馬や競艇、パチンコなどのギャンブル
- キャバクラやホストクラブ、コンカフェ等での多額の浪費
- 高級車やブランド品の購入
- FXや仮装通貨などのハイリスクな投資
- 会社に対する不満等からのいやがらせ目的
他にも、離婚や家族の病気等をきっかけに生活が苦しくなり、追い込まれた結果つい会社のお金に手を出してしまうといったケースもあります。
5−2.(2)横領を防ぐための社内体制が整っていない
二つ目は、横領を防ぐための社内体制が整っていないことです。
以下のような環境では、魔が差した時に経理担当者が簡単に横領できてしまうため、業務上横領が発生してしまう原因となります。
- 長期間、経理担当者が変わらない
- 経理担当者が一人だけ
- チェック体制がなく、経理担当者に任せきりで放置している
- 印鑑と通帳の両方を担当者一人で管理しており、自身のみで出金できる環境がある
特に中小企業などは、人手不足から経理担当者が一人しかおらず、かつ長期間にわたり経理を担当しているケースが多く見られます。「あの人はベテランだから大丈夫だろう」と思い込んでチェックをおざなりにしたり、任せきりにしてしまうと、気づいたときには多額の金銭を横領されてしまうといったことになりかねません。
経理担当に同じ従業員を長期間つかせないことや、ダブルチェック体制にするなど、不正を防ぐための対策をとることが必要です。
6.経理担当者による業務上横領がニュースになった事例
次に、経理担当者による業務上横領がニュースになった事例をいくつかご紹介します。
6−1.静岡・吉田町商工会の事例
経理担当としておよそ15年勤務していた元職員が、2024年から2025年の間に現金1000万円以上を横領した事案です。
この元職員は横領発覚後に依願退職しました。令和6年1月頃、事務局長が金銭の流れに不審な点があると感じたため内部調査を行ったところ、今回の横領が発覚したということです。商工会は令和6年7月4日に牧之原警察署に被害届を提出しています。
6−2.鹿児島・錦江町社会福祉協議会の事例
経理担当として勤務していた40代男性職員が、2017年から2023年の間に町の社会福祉協議会の口座から合計3189万円を横領した事案です。また、他にも、男性職員は経理担当としてサービス利用者から複数の通帳を管理していましたが、そのうち高齢者の通帳から約270万円を横領していました。
社会福祉協議会は男性職員を懲戒解雇処分とし、被害額の全額弁済を請求しました。完済されない場合は、業務上横領で刑事告訴する方針とのことです。
6−3.愛媛県愛南町の会社の事例
元経理担当の男性社員が、2024年4月から9月までの間に、会社の口座から自身の口座に48回にわたって合計約300万円を送金し、横領した事案です。
男性職員は犯行後、自己都合で退職しましたが、後任の担当者が本件横領に気が付き、発覚しました。愛南警察署は2026年1月8日、業務上横領の疑いで男性職員を逮捕しました。
▶参考情報:また、実際に咲くやこの花法律事務所が経理担当者による業務上横領についての対応をサポートした事例についても紹介しています。こちらもあわせてご参照ください。
7.経理の横領を未然に防ぐための対策とは?

経理担当者による業務上横領を未然に防ぐための対策としては、「横領してもバレない」と思われないようにすることが重要です。
例えば以下のような取り組みが考えられます。
- (1)経理業務を複数名で担当する
- (2)定期的にジョブローテーションを行う
- (3)上長や担当者による承認制度を設ける
- (4)他の人がチェックしていることを経理担当者に意識させる
以下でそれぞれ解説します。
7−1.(1)経理業務を複数名で担当する
横領を未然に防ぐための対策の一つとして、経理業務を複数名で担当し、送金等の役割を分けるという方法があります。
業務を分割し、物理的に不正に着手することが難しい状況を作ることで、横領を未然に防ぐことができます。また、従業員数が少ない等の事情で経理担当者を複数名確保することが難しい場合は、定期的に経理担当者を交代させる等といった対応が考えられます。
7−2.(2)定期的にジョブローテーションを行う
経理担当者内で定期的にジョブローテーションを行うことも、有効な対策の一つです。
ずっと同じ人が特定の業務を担当しているという状態をなくすことで、不正があったとしても、早期に発見することができます。横領してもすぐに発覚するという仕組みを作ることが大切です。業務に関するマニュアルを作成するなどして、どの担当者も同じ方法で業務を行うことをルールにすると、他の担当者によるチェックがしやすくなります。
7−3.(3)上長や担当者による承認制度を設ける
経理担当者に不正を防ぐためには、送金や出金の際等に、上長や他の担当者による承認制度を設けることも有効な手段の一つです。そして、通帳や印鑑は経理担当者以外の人が管理し、経理担当者1人では出金できない仕組みにすることが適切です。
承認制度を設けることで、意図的な不正だけでなく、入力ミスや重複支払いといった実務上の誤りもチェックで防ぐことが可能になります。結果として、社内の経理業務の透明性が高まり、会社と従業員の両方を守ることにつながります。
7−4.(4)他の人がチェックしていることを経理担当者に意識させる
他の人の目があるということを意識させることも、横領してもバレないと思われないために重要です。
税理士に関与してもらったり、経営者や経理担当以外の第三者が定期的に確認する機会を設ける等といった対応が必要です。
弁護士西川 暢春
不正が発覚した場合に会社として厳格な対応をすることも、不正を防ぐ対策の1つになります。きちんと損害賠償請求や刑事告訴等の対応を取った上で解雇し、他の従業員に対し「横領は絶対に許さない」という姿勢を示すことがその後の不正防止につながります。
「少額であっても横領は刑事告訴した上で解雇する」等といった方針を明確にし、会社としての不正に対する厳格な姿勢を周知している例もあります。
8.業務上横領被害について弁護士に相談すべき理由
経理担当者による業務上横領被害については弁護士に相談することが適切です。その理由として以下の2つがあげられます。
- (1)適切な証拠の収集がその後の対応の成否を分ける
- (2)自社のみでの事情聴取は難しい
順番に解説します。
8−1.(1)適切な証拠の収集がその後の対応の成否を分ける
業務上横領に関する対応の中で最も重要なことは、十分な証拠を確保して本人の事情聴取に臨み、本人に業務上横領等を認めさせることです。しかし、どのような証拠が有力な証拠となるかについては、横領の手口等によっても異なり、自社のみで適切な証拠を確保するのは困難なことがほとんどです。また、自分では十分に横領の証拠を確保したつもりでも、不十分になってしまっていることは多いです。
これでは本人に言い訳されてしまい、本人に不正を認めさせることができない恐れがあります。
その場合でも、横領した経理担当者に対して損害賠償請求訴訟を提起することは可能ですが、裁判所でも証拠が不十分であるとして、敗訴する危険があります。弁護士に依頼することで、事案に応じて適切な証拠を確保することが非常に重要です。
弁護士西川 暢春
弁護士は弁護士会照会(23条照会)と呼ばれる弁護士のみが利用できる調査手段をとることができ、そこから得られる証拠が非常に重要になることもあります。
弁護士会照会を活用して調査し、横領した金銭の返還を誓約させた解決事例について以下でご紹介していますのであわせてご参照ください。
8−2.(2)自社のみでの事情聴取は難しい
筆者の経験上、業務上横領等の不正を行っている従業員に対して事情聴取を行って、本人が簡単に不正を認めるということはあまりありません。不正を認めることは、自身の犯罪行為を認めることなので、当然かもしれません。
自社のみで本人に事情聴取をしてしまうと、のらりくらりとかわされて、業務上横領等の不正を認めさせることができない結果に終わることも多いです。そして、最初の事情聴取の段階で本人に横領を認めさせることができないと、企業側が証拠によって業務上横領等の不正を本人が行ったことを立証する必要があり、また、金銭被害の回復のためには訴訟が必要になってしまいます。
事情聴取は弁護士に依頼することで、弁護士のノウハウやこれまでの経験を活かした対応ができます。本人に確実に不正を認めさせるためには、事情聴取は弁護士に依頼すべきでしょう。
9.実際に咲くやこの花法律事務所の弁護士が経理担当者による業務上横領についての対応をサポートした解決事例
次に、経理担当者による業務上横領について、咲くやこの花法律事務所で実際に対応した事例を2つご紹介します。
9−1.クリニックの受付・会計担当の従業員が売上を横領した事案
クリニックで受付・会計担当として業務していた従業員が、およそ3年間で患者が現金で支払った料金合計500万円を横領した事案です。
この従業員は以下のような方法で横領を繰り返しました。
- 一人で受付をしていた際に、患者から受け取った現金を一旦レジに入金したうえで、営業終了後にレジ閉めを行い、レジのなかの現金を数えるタイミングで、レジから抜き取って、制服のポケットに入れて更衣室へ行き、着替える際に現金を自分の鞄に入れる
- 患者から受け取った現金を、最初からレジに入れずに、封筒に入れたうえで、受付に設置されている封筒や引き出しの中にしまい、その日に帰宅する際に引き出しから封筒を取り出して持ち帰る
咲くやこの花法律事務所の弁護士が、クリニックの顧問税理士と協力して調査を行い、証拠を確保した上で、弁護士が従業員本人と面談したところ、本人が横領を認めたため、誓約書を作成し、分割して毎月返済する旨の合意を締結し、公正証書を作成しました。
9−2.建設会社で経理を一人で担当していた従業員が横領した事案
経理を一人で担当していた従業員が、会社のお金を無断で自身の口座に送金することを繰り返し、合計で約1900万円を横領した事案です。
この会社では通常の口座のほかに、協力会費等の会費を保管するための口座が別途用意されており、この従業員は毎月会社から渡された現金を会費保管用の口座に入金する業務を担当していましたが、渡された現金を会費保管用の口座に入金することなく、自身の口座に入金し、そのお金をギャンブル等に使用していました。
会社からのご依頼によって、弁護士が従業員本人と面談を行い、横領を行ったことを認めさせ、自認書と全額返金する旨の合意書を締結しました。その後、全額返金させたのちに、合意退職してもらうことで解決しました。
10.横領被害の対応に関して弁護士に相談したい方はこちら

最後に、咲くやこの花法律事務所の弁護士による横領被害に関するサポート内容をご紹介いたします。
咲くやこの花法律事務所の業務上横領に関する被害企業向けサービスについては、以下の動画でもサポート内容や強み、実績などをご紹介していますので、あわせてご参照ください。
10−1.業務上横領に関するご相談
咲くやこの花法律事務所では、被害企業からの以下のような業務上横領等による被害に関するご相談をお受けしています。
- レジや金庫等からの売上金の横領に関するご相談
- 不正な経費請求に関するご相談
- 経理担当者による不正送金に関するご相談
- 架空発注の取引による詐欺や横領に関するご相談
前述した通り、社内で業務上横領が発生した場合の対応の中で最も重要なのは、証拠の確保と本人への事情聴取です。これらの段階で誤った対応をしてしまうと、その後の被害回復や解雇が困難になるおそれがあるため、横領が発覚した場合はすぐに、業務上横領被害回復に精通した弁護士にご相談いただくことが重要です。
咲くやこの花法律事務所では、業務上横領被害回復について多数の解決事例があり、事務所の経験を活かして、迅速な解決を目指します。横領被害を受けて対応にお困りの事業者の方は、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
咲くやこの花法律事務所へのご相談費用
- 初回相談料:30分5,500円(税込。顧問契約締結の場合は無料)
- 相談方法:来所相談のほか、オンライン相談、電話相談が可能
10−2.顧問契約サービス
業務上横領の対策で最も重要なことは、社内で横領が起こりにくい体制を作ることです。
咲くやこの花法律事務所では、事業者向けに日頃から労務全般をサポートする顧問弁護士サービスを提供しており、身元保証書の整備、金銭管理規程の整備、金銭管理マニュアルの策定等社内で横領が起こりにくい体制づくりについてもサポートいたします。もし横領被害が起きた場合も、会社の実情に詳しい弁護士が初期段階から対応することで、被害を最小限に抑えることが可能です。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについては、以下で詳しく説明していますので、ご覧ください。
11.まとめ
この記事では、経理担当者による業務上横領の手口や会社が取るべき対応、業務上横領を未然に防ぐための対策などについて解説しました。
業務上横領とは、業務上自己の占有する他人の物を横領する犯罪です。
経理担当者の業務上横領の手口としては、以下などがあります。
- レジや金庫等から現金を抜き取る
- インターネットバンキング等を利用して会社の口座から自身の口座に送金する
- 交通費や接待費の架空請求による着服・取引先と共謀して会社に無断でキックバックを受領する
- 社内の切手や金券を無断で売却し、金銭を着服する
このような業務上横領が起きる主な原因としては、経理担当者側に横領の強い動機があることや、横領を防ぐための社内体制が整っていないこと等が考えられます。
そして、経理担当者による業務上横領を未然に防ぐための対策としては、以下のような方法が有効です。
- (1)経理業務を複数名で担当する
- (2)定期的にジョブローテーションを行う
- (3)上長や担当者による承認制度を設ける
- (4)他の人がチェックしていることを経理担当者に意識させる
経理担当者による業務上横領が発生した場合、会社が取るべき対応は以下の通りです。
- (1)調査を行い、業務上横領の証拠を確保する
- (2)本人に事情聴取を行う
- (3)返済方法を協議する(必要に応じて刑事告訴も検討する)
- (4)懲戒解雇・普通解雇・退職勧奨等により雇用を終了する
- (5)社内・社外への説明をする
- (6)再発防止策を立てる
中でも特に重要なのが、初期段階での証拠収集と、本人への事情聴取です。十分な証拠が集められなかったり、事情聴取で本人に横領を認めさせることができなかった場合、その後の損害賠償請求や刑事告訴、解雇に大きな支障が生じます。
特に解雇については、証拠不十分なまま解雇してしまうと、逆に従業員から訴訟を起こされて敗訴し、会社側がさらなる被害を受けるおそれもあります。このようなリスクがあるため、業務上横領が発生した場合は、必ず初期段階から弁護士に対応を依頼することをおすすめします。
咲くやこの花法律事務所では、横領被害事件について多くの事業者様からのご相談をお受けして、解決してきた実績があります。業務上横領の被害でお困りの事業者様はぜひ一度ご相談ください。
12.【関連】業務上横領に関するその他のお役立ち記事
この記事では、「経理担当者による横領について会社側対応や防止対策を事例付きで解説」について、わかりやすく解説しました。以下では、横領に関連するお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもあわせてご参照ください。
・業務上横領発覚時の会社の対応とは?被害回復や処分の手順を詳しく解説
・架空取引とは?主な手口や発覚時の対処法、防止対策を事例付きで解説
・業務上横領の時効は何年で成立?民事と刑事のケースや起算点について解説
・業務上横領で警察は動かない?被害届が受理されない場合の対処法を解説
・着服とは?横領との違い、意味や事例について弁護士が詳しく解説
記事作成日:2026年3月31日
記事作成弁護士:西川 暢春



















