こんにちは。弁護士法人咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
従業員による横領が発覚した場合、会社としてどのように金銭の返済を求めればよいか、適切な初動対応をご存知でしょうか?
咲くやこの花法律事務所では、会社や医療機関、その他事業者における業務上横領被害について、行為者に対する損害賠償請求、返還請求のご相談を数多くいただき、解決してきました。
例えば、以下のようなご相談をよくいただきます。
- 長年横領されていたことが発覚したがどのように対応すればよいかわからない
- 特定の従業員の出勤日にだけレジ金にマイナスが出る
- 横領した従業員に問い詰めたら連絡が取れなくなった
このようなケースでは、必ず企業の横領被害回復に詳しい弁護士に相談する必要があります。
従業員による業務上横領が発覚した場合、すぐに本人に問い詰めてしまう経営者や担当者の方は少なくありません。しかし、十分な準備をしないまま、本人を問い詰めると、横領を否認されたうえに証拠を隠滅されるなどして、被害回復が難しくなります。
業務上横領による被害を回復するためには、経験のある弁護士のサポートを受けながら、証拠収集、事情聴取、返済交渉を適切な手順で進めることが重要です。初動対応を適切に行うことで、本人から横領を認めさせることが、その後のスムーズな返済につながります。
この記事では、業務上横領が発覚した場合に会社が損害賠償請求を行う際の適切な流れや、事情聴取で横領を認めさせるポイント、証拠収集の方法などについて、企業側の立場からわかりやすく解説します。この記事を最後まで読めば、現在、従業員による横領が発覚し会社としての対応を検討されている事業者の方は、業務上横領発覚時の返済請求についてどのように進めればよいかが理解でき、自社の横領被害回復に向けて正しい第一歩を踏み出せるはずです。
それでは見ていきましょう。
弁護士西川 暢春
業務上横領が発覚したときに、弁護士に相談しないまま本人に問い詰めてしまうケースは少なくありません。その結果、本人が横領を認めず、退職してしまったり連絡が取れなくなってしまい困っているというご相談がよくあります。
被害の回復のためには、横領被害が発覚した時点で、自社で誤った対応をする前に、適切な弁護士に相談することが非常に重要です。横領被害が発覚した段階で、本人に問い詰める前に、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
▶参考情報:業務上横領のトラブルに関する咲くやこの花法律事務所のサポート内容については以下もご参照ください。
・業務上横領の被害回復について弁護士によるサポートはこちら(被害企業向け)
また、実際に咲くやこの花法律事務所の弁護士によりサポートした業務上横領に関する解決実績についてもあわせてご参照ください。
・咲くやこの花法律事務所の業務上横領に関する解決実績はこちら
※咲くやこの花法律事務所では、企業または事業者からのご相談のみお受けしています。
1.業務上横領で損害賠償請求はできる?

最初に結論から言えば、業務上横領が発覚した場合、会社は横領をした本人に対して損害賠償請求をすることができます。業務上横領は、業務上会社から預かって管理している金品を自分のものにしてしまうことであり、会社に経済的な損害を与えるものです。会社に対する不法行為に該当し、会社は民法に基づく損害賠償請求を行うことが可能です(民法709条)。
▶参考情報:民法709条
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
・参照:「民法」の条文はこちら
ただし、損害賠償請求は適切な順序で進めていく必要があります。誤った対応をしてしまうと、客観的な証拠が確保できなかったり、本人に横領を認めさせることができず、結果として訴訟が必要になったり、十分な弁済を受けることができなくなったりしてしまう危険があります。
横領した従業員に返済能力がない場合は分割払いにより返済させることや、身元保証人がいる場合は身元保証人に対して請求をすることも検討すべきでしょう。被害を回復するためには、証拠収集といった初動対応や、事情聴取の進め方、そしてその後の本人や身元保証人との適切な交渉が非常に重要となります。
弁護士西川 暢春
業務上横領被害にあった場合に損害賠償請求の対象となる額は、被害金額そのものだけではありません。
横領発覚により税務申告の修正や加算税の納付が必要になった場合は、税務申告の費用や加算税についても行為者に損害賠償を求めることができます。そのほか、遅延損害金や、調査に要した費用についても請求することが可能です。さらに、被害回復のために訴訟を起こした場合は、それに要した弁護士費用の一部を請求することも認められます。
2.業務上横領で返済請求する場合の流れとは?

業務上横領の返済請求は、以下の流れで進めていきます。
- (1)手順1:弁護士に相談しながら証拠を収集する
- (2)手順2:身元保証書の提出の有無を確認する
- (3)手順3:本人や身元保証人の財産調査を行う
- (4)手順4:本人へ事情聴取を実施する
- (5)手順5:本人と賠償方法を協議する
- (6)手順6:公正証書を作成する
それぞれご説明します。
2−1.手順1:弁護士に相談しながら証拠を収集する
従業員による横領が発覚した場合、まずは弁護士に相談しながら横領の証拠を収集する必要があります。この段階で、適切な弁護士に相談して、どのような証拠を集めるべきかを確認し、また今後の進め方についても個別の事案の事情に応じた適切な方法を確認しておくことが大切です。
本人に弁済させるための1つ目のゴールは「本人に横領を認めさせること」となりますが、そのためには本人が言い逃れできないような証拠を集めておく必要があります。
この時、会社が調査をしていることを本人に知られてしまうと、証拠となるデータを削除されるなど、証拠隠滅を図られる可能性があります。そのため、本人には知られないように水面下で証拠収集を進めていくことが大切です。弁護士会照会と呼ばれる弁護士のみが行うことができる証拠収集手段の活用も、必要に応じて検討することが適切です。
具体的な証拠の収集方法については、「4.業務上横領の証拠とは?証拠がない場合はどうするべきか?」でご説明します。
2−2.手順2:身元保証書の提出の有無を確認する
次に、横領した従業員から身元保証書が提出されているかを確認しておきます。身元保証書が提出されている場合は、本人にだけでなく身元保証人にも返還を請求することが可能です。
また、身元保証書の有効期限が切れていないかや、責任限度額(極度額)の確認が必要となります。有効期限が切れていたり、責任限度額(極度額)の記載がない場合は、身元保証書は無効となりますので、注意しましょう。
▶参考情報:身元保証書については、以下の記事で書き方や注意点を雛形付きで解説しています。こちらもご参照ください。
2−3.手順3:本人や身元保証人の財産調査を行う
次に、本人へ事情聴取をする前の段階で、本人や身元保証人の財産を調査しておきます。
まずは本人や身元保証人の自宅の登記簿謄本を取得し、自宅の所有名義人になっているかを確認します。自宅の所有名義人になっている場合は、自宅を売却させたり、自宅を担保に借り入れをさせるなどの方法で、返済のための原資を確保させることができます。
また、従業員から年末調整の際に「給与所得者の保険料控除申告書」が提出されている場合は、生命保険の有無等を確認します。生命保険がある場合はその解約返戻金も返済資金に充当させることができる可能性があります。
このように、予め本人や身元保証人の財産を把握しておくことで、本人から「お金がないから返せない」という言い訳をされることを防ぐことができます。
弁護士西川 暢春
身元保証人の勤務先等を把握しておくことも、横領被害回復のために有用です。勤務先を把握しておくことで、身元保証人の給与の差押え等を検討できる可能性があります。
2−4.手順4:本人への事情聴取を実施する
証拠の準備や財産調査が済んだら、いよいよ本人への事情聴取を実施します。
この際、事前に面談することを本人には伝えずに、就業時間中にいきなり呼び出して面談を実施するようにしましょう。そうすることで、証拠を隠滅したり、言い訳を考えたり、会社を休むなどといったことを防ぐことができます。
本人への事情聴取でのゴールは、①本人に横領を認めさせることと、②横領金の返済を誓約させることです。
まずは、聞き取りを進め準備した証拠を上手く使って、本人に横領を認めさせます。
本人に横領を認めさせる方法については「3.事情聴取で横領を認めさせるポイントとは?」でご説明します。
本人が横領を認めたら、次は横領の日時や金額、手口を確認します。
会社が調査して把握している分以外にも横領がないかを確認しておく必要があります。このとき、会社がどこまで把握しているかについては伏せて、本人にすべての横領を申告するように迫ることが大切です。
次に、支払誓約書を提出させます。
支払誓約書は、横領があった事実を証明する重要な証拠となります。そのため、支払誓約書を提出させる時点において、返済時期や弁済方法が未定であっても、まずは横領をした事実とその金額を記載し、面談の中で本人に署名させることが非常に重要となります。
弁護士西川 暢春
支払誓約書は、横領を認めた事情聴取の中で提出させる必要があります。
一度持ち帰らせてしまうと、後から横領を認めたことを撤回されてしまい、支払誓約書に署名してもらえないということになりかねません。あらかじめ会社側で金額欄を空欄とした支払誓約書を用意しておき、面談時に確認できた金額を記入して、その場で本人に署名させるようにしましょう。
2−5.手順5:本人と賠償方法を協議する
支払誓約書を提出させたら、次は具体的な賠償方法の協議に進みます。
一括で全額を返還させられればベストですが、本人が横領した金銭を既に使ってしまっているケースや、長年にわたり横領されており金額が多額になっている場合などでは、一括で返済することができないケースもあります。そういった場合は、まずできる限りの弁済をさせたうえで、残りについて分割払いの交渉を進めていきます。
(1)まずは本人の財産から可能な限りの弁済をさせる
一括払いが難しい場合であっても、まずは本人の財産から可能な限りの弁済をさせることが重要です。本人の預貯金のほか、中小企業退職金共済に加入しているケースでは退職金から弁済させたり、親族に借入れをさせるなどして、できる限りの弁済をさせます。自宅を売却させる、生命保険金を解約させるといったことも必要です。
それでも横領金額全額の返済に満たない場合は、本人からすべての預金口座の取引明細を提出させ、本当に一括で返済ができないかを確認します。
提出された取引明細からは、他の口座への資金の移動の有無や、会社が把握していない生命保険料の引き落とし、証券口座がないかを確認します。生命保険は解約させ、証券がある場合は売却させて、返済の資金に充てさせることができます。
(2)分割払いの交渉をする
できる限りの弁済をさせたうえで、それでも全額の返済に足りない分については分割弁済の交渉をすることとなります。
本人が既に転職しているような場合は、分割払いの毎月の弁済金額を決めるうえで、転職先の社名、給与の支払日、給与や賞与の金額等を把握しておくことが大切です。分割返済の毎月の支払日を転職先の給与支給日の直後に設定することで、本人としても支払いがしやすいため、確実な回収に繋がりやすくなります。
分割返済の内容が決まったら、合意書を作成します。
この合意書には、「分割払いが一回でも遅れた場合は、残りの分を一括で支払わないといけない」という「期限の利益喪失条項」を入れておくことが非常に重要です。
弁護士西川 暢春
身元保証人がいる場合は、本人だけでなく身元保証人も面談に来てもらい、交渉に参加させることが適切です。そうすることで、本人に対して横領金返還に向けてプレッシャーをかけることができます。
また、身元保証人からも預金口座の取引明細や収入の金額が分かる資料を提出してもらい、分割払いの金額を決めていくことが大切です。
2−6.手順6:公正証書を作成する
分割払いの合意書が作成できたら、「強制執行認諾文言付公正証書」を作成しておくと安心です。「強制執行認諾文言付公正証書」を作成しておくことで、分割返済が滞った場合でも、裁判をせずに、本人の財産を差し押さえる強制執行に進むことができます。
2−7.手順7:本人が返済しない場合は訴訟・仮差押え・強制執行により回収を実現する
本人が横領を認めなかったり、横領を認めてもその後の支払いが進まない場合は、民事訴訟により回収を実現することが必要です。
回収を実現するためには、本人の財産を調査したうえで、その処分を凍結する仮差押えの手続きを行います。この仮差押えの手続きを経てから、民事訴訟を進めることが重要です。勝訴判決を得た後も支払いに応じないときは、強制執行により回収を実現することが必要になります。
▶参考動画:業務上横領で返済請求する場合の重要ポイントについては、この記事の著者 弁護士 西川暢春が、「従業員に横領された金銭の返還請求をするときのポイント!」の動画で詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
弁護士西川 暢春
このように訴訟による対応も可能ですが、訴訟による対応は解決までに長期間を要するうえ、多額の費用もかかります。
これに対し、本人に事情聴取を行ったうえで返済を誓約させる方法は、訴訟よりも低コストで迅速・確実な回収が可能です。そのため、例えば、本人が既に退職しているといったケースでも、いきなり訴訟を起こすのではなく、まずは本人を呼んで事情聴取により横領を認めさせて返済に応じさせることができないかを試すことが非常に大切です。
咲くやこの花法律事務所では、できるだけコストをかけずに、迅速・確実に回収する方法を企業にご提案しています。
3.事情聴取で横領を認めさせるポイントとは?

事情聴取では、用意した証拠を上手に使って矛盾している点を指摘し、横領を認めさせることが必要です。この点は、弁護士の経験やノウハウがものをいうところですが、簡単な概要としては以下の通りです。
3−1.不合理な説明がされてもまずは最後まで話を聞く
まずは、「〇月〇日の金額が合わずに調べているのですが、思い当たることはありますか?」「〇月〇日にレジ金の差額が〇円出ているのですが、何か知っていますか」というふうに、相手が犯人と決めずに質問します。
そして、本人から会社側で収集した証拠と矛盾する主張や不合理な説明がされても、すぐには指摘せず、まずは最後まで話を聞きましょう。そうしながら、本人の回答について、事前に収集した証拠や会社が把握している事実と矛盾する点を見つけていきます。
3−2.本人の回答と準備した証拠の整合性を確認し、矛盾している点を指摘する
本人の説明を最後まで聞いたら、会社が収集した証拠を上手く使い、矛盾している点を指摘して横領を認めさせます。ひと通り本人に話をさせておくことで、証拠を出したときに言い逃れできない状況を作ることができます。
証拠は最初からすべて提示するのではなく、矛盾点を指摘する際に小出しにしていきます。そうすることで、本人に「これ以上嘘は通用しない」と自覚させ、横領の犯行を認めさせやすくなります。
3−3.事情聴取は弁護士のノウハウ活用が重要
事情聴取で本人に横領を認めさせることができるかどうかで、被害回復にどのくらいの費用と時間がかかるか、被害を確実に回復できるかが大きく変わってきます。事情聴取で本人に横領を認めさせることは非常に重要であり、横領被害回復に精通した弁護士に事情聴取を依頼することをおすすめします。
4.業務上横領の証拠とは?証拠がない場合はどうするべきか?
では実際に、どういった証拠を集める必要があるでしょうか。これは個別のケースごとに必ず弁護士に相談して確認する必要がありますが、以下で概要をご説明します。
4−1.レジ金を着服しているケース
従業員がレジ金を着服しているケースでは、従業員がレジ金をポケットに入れている場面を撮影した防犯カメラの映像がもっとも有効な証拠となります。
また、一度だけ現金をポケットに入れている場面だけでは、「後でレジに入れるつもりだった」などと弁解される可能性があります。そのため、複数回にわたって同様の行為が繰り返されていることについて証拠を確保することが大切です。
▶参考情報:レジ金を着服しているようなケースについては、以下の記事で着服に関する対応なども詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
4−2.集金担当者が金銭を着服しているケース
取引先から現金で集金した金銭を担当者が着服しているケースでは、取引先は代金を支払ったにもかかわらず、その金銭が会社へ入金されていないという状況になります。そのため、担当者が取引先に渡している領収書を確保することが証拠収集として有効です。
取引先と連絡をとったうえで、取引先が保管している領収書のコピーを提供してもらい、担当者が取引先から代金を受け取った日時や金額などを確認することが重要です。
4−3.お店の商品を勝手に持ち帰っているケース
店舗の商品を従業員が無断で持ち帰っている疑いがある場合には、防犯カメラ映像の確認が最も重要になります。商品をバッグなどに入れて隠している様子や、レジで精算することなく店舗から持ち出している様子が記録されていれば、有力な証拠となります。
ただし、状況によっては、一度だけの商品持ち出しでは、「後で精算するつもりだった」「誤って持ち帰ってしまった」などと主張される可能性もあります。そのような場合は、複数回にわたる持ち帰り行為について証拠を確保することで、故意による着服であることを裏付けることが重要になります。
4−4.証拠がない場合はどうするべきか?
客観的な証拠が無い場合は、以下の方法を検討しましょう。
(1)事情聴取で自白させる
防犯カメラの映像などの決定的な証拠がないようなケースでも、犯人に適切に事情聴取を行い、横領の事実を認めさせ、誓約書に署名させることができれば、その誓約書が横領の事実を裏付ける証拠となります。
ただし、十分な証拠がない事案で、事情聴取で本人に横領を自白させることは簡単ではありません。事前に、あらゆる言い訳を想定した調査を尽くし、予想される言い訳に対して反論できる資料を先回りして準備したうえで事情聴取に臨むことが必要です。
(2)弁護士会照会(23条照会)を活用する
弁護士に依頼することで、弁護士だけが活用できる調査手段を活用して証拠を確保できる例も少なくありません。例えば、弁護士会照会(23条照会)と呼ばれる弁護士だけが活用できる調査方法により、横領の証拠を確保し、それにより、本人に横領を認めさせることができる例があります。まずは弁護士に相談することが重要です。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の解決事例の1例として、弁護士会照会を活用した調査により、6000万円超の横領を自白させ、支払を誓約させた事例を以下でご紹介しています。
この記事の著者 弁護士 西川暢春が、「財務部長が6000万円横領!“完全自白”させた弁護士会照会の威力とは?【弁護士が実例を解説】」の動画でも解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
(3)横領以外の請求方法を検討する
横領以外の方法で損害賠償請求することができないかも検討してみましょう。
例えば、取締役が会社の商品を転売していることが疑われるケースでも、事情聴取において、会社の商品の転売ではなく、自分で買った商品の販売であるなどと主張される例があります。
そのような場合、取締役が自分で買った商品の販売であればもちろん横領にはあたりません。しかし、そうだとしても、取締役が会社と同じ商品を扱うことは、事前の許可を得なければならない競業取引にあたります。
そのため、仮に横領であることについて十分な証拠がなかったとしても、競業取引にあたることを理由に、会社法に基づいて損害賠償を請求することができます。
▶参考情報:業務上横領の証拠がない場合の対応については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、是非参照ください。
また、この記事の著者 弁護士 西川暢春が、「社内で横領が起きたとき!どうやって証拠をおさえる?【裁判例の解説付き】」や、「社内で業務上横領が起きたときの調査方法!4つの具体的ケースを解説」の動画でも詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
弁護士西川 暢春
横領の証拠が無い場合も、事情聴取をする前に横領に詳しい弁護士に相談することが必要です。
証拠がないケースでの事情聴取では、最初の事情聴取で横領を認めさせることができるかが鍵となります。一度目の事情聴取で失敗してしまうと、横領を認めさせることが困難となり、証拠がないため裁判でも横領の立証をすることが難しくなってしまいます。結果として弁済をうけることができない可能性が高くなります。
また、証拠が無い状態での事情聴取は、本人への質問の仕方などについて十分な工夫が必要となり、証拠がある場合に比べてさらに難易度が上がります。
こういった場面では、横領被害回復の対応に慣れている弁護士のノウハウを活用することが重要です。
5.同時に刑事告訴をすることはできる?
会社からの損害賠償請求と並行して刑事告訴をすることも可能です。
本人が弁済に応じないという不誠実な対応をするケースでは、刑事告訴をすることで、本人に返済を促す効果が期待できることもあります。また、他の従業員に「横領に対して厳粛に対応する」という会社の姿勢を示すことができ、再発防止にも繋がります。
一方で、刑事告訴をすることで、本人が実刑になり、本人に収入がなくなることで弁済を受けることが難しくなるケースもあります。そのため、刑事告訴をするかどうかは、刑事告訴のデメリットも十分踏まえたうえで、弁護士に相談をして慎重に判断する必要があります。
▶参考情報:業務上横領の刑事告訴のデメリットについては、以下の記事で詳しく解説していますので、是非ご参照ください。
6.返還請求について弁護士に相談する適切なタイミングは?

最初に結論から言えば、従業員の業務上横領が発覚した場合、本人に問い詰めたり、事情聴取をする前の段階で弁護士に相談することが非常に重要です。
弁護士に相談する前に、本人に問い詰めたり事情聴取を実施したりしてしまうと、上手く横領を認めさせることができなかったり、証拠を削除されてしまい、横領の事実を立証すること自体が困難となるリスクがあります。そうなってしまうと、後から弁護士に依頼しても、リカバリーが難しく、結果十分な弁済をうけることが難しくなります。
筆者が代表を務める咲くやこの花法律事務所では、業務上横領被害の返還請求について、企業側の立場に立って、以下のような支援を行っています。
- どの証拠をどの方法で収集すべきかのアドバイス
- 事情聴取の前にしておくべきことのアドバイス
- 事情聴取で横領を認めさせるためのポイントのアドバイス
- 証拠収集や横領の事情聴取についての代行
- 合意書や支払誓約書作成のサポート
被害がわかった段階で弁護士のサポートを受けることで、適切な対応ができ、確実な被害回復につながります。
弁護士西川 暢春
返還請求を検討するにあたっては時効も考慮する必要があります。
業務上横領被害についての返還請求・損害賠償請求は、基本的には損害および加害者を知った時から3年で時効にかかります。時効について、詳しくは、以下で解説していますのであわせてご参照ください。
7.実際に咲くやこの花法律事務所の弁護士がサポートした業務上横領の解決事例
咲くやこの花法律事務所では多くの事業者から、業務上横領被害の回復についてのご相談をお受けし、実際に解決してきました。以下では咲くやこの花法律事務所の解決事例の中からいくつか参考になる事案をご紹介します。
7−1.決定的な証拠がないレジ金横領事案。弁護士による事情聴取で自白させて被害全額の回収に成功した事例
内科医院において、受付業務を担当する従業員によるレジ金の横領が疑われた事案です。
従業員の出勤日に限って現金不足が発生していましたが、現金を抜き取る場面の映像など、横領を直接裏付ける決定的な証拠はありませんでした。
そこで、咲くやこの花法律事務所が依頼を受け、弁護士が売上集計表やカルテ等を詳細に分析し、従業員の言い訳を想定したうえで証拠を整理しました。その後、弁護士が本人との面談を行い、まず本人の説明を十分に聞いたうえで、その説明と矛盾する証拠を段階的に提示して、横領を自白するように迫りました。
その結果、本人から横領の自白を得ることに成功し、その場で横領額を一括返済する内容の債務承認弁済契約書に署名させることができました。そして、数日後には被害額全額を一括で回収することができました。
▶参考情報:この解決事例の詳細は以下でご紹介していますのであわせてご参照ください。
7−2.横領した元従業員が返済しないため、転職先の給与を差し押さえて回収した事例
従業員が取引先から集金した売掛金を横領していたことが発覚し、会社が従業員を解雇した事案です。被害額は約300万円にのぼり、会社から回収についてご相談いただきました。
咲くやこの花法律事務所では、請求書や領収書等を精査して横領の日時・取引先・金額を特定したうえで、元従業員に損害賠償を請求しました。本人に横領を認めさせ、債務残高確認書を取得しました。一括返済が困難であったため、分割返済について強制執行認諾条項付きの公正証書を作成しましたが、その後、本人が支払いをしなくなります。
そこで、事前に把握していた転職先の情報をもとに、公正証書に基づいて給与の差押えを申し立てました。差押えは成功し、その後、元従業員の転職先から毎月給与の一部を会社に支払わせる形で、横領被害の回収を実現しました。
▶参考情報:この解決事例の詳細は以下でご紹介していますのであわせてご参照ください。
7−3.EC通販会社の在庫品の横領事件。横領した取締役からの全額回収に成功した事例
EC通販会社の取締役が、会社所有の在庫品を持ち出し、インターネット上で転売していたことが疑われた事案です。
取締役が在庫品を持ち出したことを直接裏付ける証拠が十分ではなかったため、咲くやこの花法律事務所では、横領による損害賠償請求に加え、取締役による無断の競業取引にあたるとして会社法に基づく請求を行いました。
弁護士名義で通知書を送付したところ、取締役は商品の持ち出しを認め、その日のうちに約200万円を全額弁済させることができました。その後、新たに判明した損害約33万円についても追加請求し、全額を回収しました。さらに、取締役から辞任届を取得し、合計約233万円の被害回復と取締役の退任を実現しました。
▶参考情報:この解決事例の詳細は以下でご紹介していますのであわせてご参照ください。
・EC通販会社の在庫品の横領事件!横領した取締役からの回収に成功した事例
また、今回ご紹介した解決事例の他にも咲くやこの花法律事務所の弁護士が対応したサポート事例をご紹介していますので、以下からご参照ください。
8.業務上横領被害の損害賠償請求なら咲くやこの花法律事務所がおすすめな理由
次に、業務上横領の損害賠償請求について咲くやこの花法律事務所への相談がおすすめな理由をご紹介します。
8−1.業務上横領について会社側のサポート経験が豊富
咲くやこの花法律事務所では、創業以来16年以上にわたり、企業法務を取扱い分野とし、会社側の立場で多くのご相談をお受けしてきました。現在は650社以上の事業者から顧問契約をいただいており、業務上横領に関するご相談にも多数対応してきました。
業務上横領といっても、その手段や規模は様々であり、事案に合わせて柔軟かつ迅速に対応を進めていく必要があります。咲くやこの花法律事務所では、これまで培ってきたノウハウをもとに、事案に応じた証拠収集の方法から事情聴取の進め方、返済請求・訴訟・刑事告訴・懲戒解雇まで幅広くサポートが可能です。
8−2.全国どこからでも相談が可能
咲くやこの花法律事務所は大阪にある事務所ですが、日本全国すべての都道府県の事業者様からご相談をいただいています。
ご相談は、電話やオンライン面談にも対応しているため、遠方の企業様でも来所いただくことなくご相談が可能です。また、ご依頼後もメールや電話、オンライン会議などを活用しながら、迅速に対応を進めることができます。
業務上横領被害の回復は、初動対応が重要です。そのため、咲くやこの花法律事務所では、地域を問わず、迅速に弁護士に相談できる体制を整えています。
8−3.弁護士費用が明確で安心
咲くやこの花法律事務所では、ご依頼いただく前に、事案の内容を丁寧にお伺いしたうえで、弁護士費用や今後の進め方についてわかりやすくご説明しています。費用面に不安がある場合でも、安心してご相談いただくことが可能です。
9.業務上横領に関して弁護士に相談したい方はこちら(被害企業向け)

最後に、咲くやこの花法律事務所のサポート内容をご紹介します。
咲くやこの花法律事務所の業務上横領に関する被害企業向けサービスについては、以下の動画でサポート内容や強み、実績などをご紹介していますので、あわせてご参照ください。
9−1.業務上横領発覚時の対応に関するご相談
咲くやこの花法律事務所では、業務上横領が発覚した際の対応について、企業側の立場で多くのご相談をお受けし、解決してきました。
業務上横領が発覚した場合、初動対応を誤ると、十分な証拠を確保できなくなったり、十分な弁済を受けることができなくなるおそれがあります。そのため、早い段階で弁護士に相談し、正しい対応方法を確認することが重要です。
咲くやこの花法律事務所では、証拠収集の方法や本人への対応、損害賠償請求や返済交渉の進め方、刑事告訴を検討すべきかどうかなど、企業ごとの状況に応じて最適な対応方法をご提案します。初動から弁護士がサポートすることで、被害回復に向けた適切な対応を進めることが可能です。
咲くやこの花法律事務所の弁護士へのご相談費用
- 初回相談料:30分5000円+税(事前に顧問契約締結の場合は無料)
- 相談方法:来所相談のほかオンライン相談、電話相談が可能
9−2.本人への事情聴取のご依頼
業務上横領が疑われる従業員に対する事情聴取は、慎重に進める必要があります。十分な証拠がないまま追及すると、証拠を隠滅されたり、横領を認めさせることができなくなったりする可能性があります。事情聴取で横領を認めさせるためには、事情聴取についてのノウハウも非常に重要です。
咲くやこの花法律事務所では、事情聴取を行うタイミングや進め方についてアドバイスを行うほか、必要に応じて弁護士が事情聴取を代行することで、企業の被害回復、返還請求をサポートします。また、本人の対応が不誠実な場合の刑事告訴や訴訟提起、強制執行についても一貫してサポートします。
咲くやこの花法律事務所の弁護士へのご相談費用
- 初回相談料:30分5000円+税(事前に顧問契約締結の場合は無料)
- 相談方法:来所相談のほかオンライン相談、電話相談が可能
9−3.顧問弁護士による継続的なサポート
咲くやこの花法律事務所では、顧問弁護士として日常的な法律相談にも対応しており、業務上横領をはじめとする従業員トラブルについて継続的にサポートしています。
業務上横領への対応は、損害賠償請求を行って終わりではありません。再発防止のためには、社内ルールの見直しや管理体制の強化、就業規則の整備など、継続的な取り組みが重要になります。
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスをご利用いただくことで、不正が発生しにくい職場環境づくりや、管理体制の強化、就業規則の整備を進めていくことができます。また、万が一、再び社内で不正が発生した場合も、迅速・確実な対応が可能になります。
さらに、その他の分野についても、咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場で数多くの事案に対応してきた実績を活かし、弁護士が、トラブルの予防、そしてトラブルが発生してしまった場合の早期解決に尽力します。顧問契約をご検討中の方は、無料で弁護士との面談(オンラインや電話も可)を実施しておりますので、気軽にお問い合わせください。
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの費用例
- 月額3万円+税~15万円+税
- 申し込み方法:来所面談のほかオンライン面談、電話でのご案内が可能
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの内容は以下をご参照ください。
10.まとめ
この記事では、事業者が業務上横領被害にあった場合の損害賠償請求、返還請求について解説しました。
従業員による業務上横領が発覚した場合は、感情的に本人を問い詰めるのではなく、適切な手順で返済請求を進めることが重要です。返済請求は、次の流れで行います。
- (1)弁護士に相談しながら証拠を収集する
- (2)身元保証書の提出の有無を確認する
- (3)本人や身元保証人の財産調査を行う
- (4)本人に対する事情聴取を実施する
- (5)本人と賠償方法を協議する
- (6)公正証書を作成する
まずは本人に知られないよう証拠を収集し、横領の事実を裏付ける資料を確保します。この段階から弁護士に相談しながら進め、場合によっては弁護士会照会等も利用することが確実な対応につながります。その後、身元保証書の有無や有効期限、責任限度額(極度額)を確認するとともに、本人や身元保証人の財産状況を調査します。財産を把握しておくことで、「返済する資力がない」という言い逃れを防ぐことができます。
準備が整ったら事情聴取を行い、証拠を効果的に示しながら本人に横領を認めさせます。この際は、横領の日時や金額、手口を確認し、支払誓約書へ署名させることが重要です。その後、一括返済が難しい場合は分割払いを含めた賠償方法を協議し、返済が滞った場合に備えて期限の利益喪失条項を盛り込んだ合意書を作成します。さらに、「強制執行認諾文言付公正証書」を作成しておけば、返済が滞った際には裁判を経ずに強制執行を行うことが可能になります。
業務上横領への対応では、初動対応がその後の結果を大きく左右します。確実な被害回復のためにも、本人を問い詰めたり事情聴取をしたりする前に、企業の業務上横領被害回復に精通した弁護士にご相談いただくことが必要です。咲くやこの花法律事務所でもご相談をお受けしていますので、ぜひご利用ください。
11.【関連】業務上横領に関するその他のお役立ち記事
この記事では、「業務上横領で損害賠償請求をするには?横領された金銭の返済請求の方法を解説」というテーマで、従業員による横領が発覚した際の損害賠償請求等についてわかりやすく解説しました。以下では、横領に関連するお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもあわせてご参照ください。
・従業員による業務上横領が発覚した際の会社の責任は?管理責任について解説
・業務上横領発覚時の会社の対応とは?被害回復や処分の手順を詳しく解説
・横領があったときの懲戒解雇や処分、退職金の扱いを詳しく解説
・業務上横領で警察は動かない?被害届が受理されない場合の対処法を解説
記事作成日:2026年9月12日
記事作成弁護士:西川 暢春



















